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女性がおしっこをする時に痛みがある場合に考えられる疾患

  1. 急性膀胱炎
  2. 尿路結石症のうち、膀胱結石
  3. 膀胱がん
  4. 性感染症(淋菌感染、クラミジア感染)
  5. 間質性膀胱炎

1.急性膀胱炎

急性膀胱炎は女性がおしっこをする時に痛みを感じる最も一般的な病気です。頻尿(おしっこが近い)、残尿感(すっきりしない)、排尿時痛(おしっこを出す時の痛み)などが特徴的な症状で、多くは排尿の終わりごろに尿道に不快な痛みを感じます(排尿終末時痛)。血尿が出ることもあります。細菌(大腸菌など)が尿道から膀胱へ感染することで起こります。

【検査】

検尿で尿中の白血球や赤血球、細菌の有無を確認します。どんな菌が感染しているか、また抗生物質への耐性がないかなどを調べるために、尿培養検査も必要です。
膀胱炎を繰り返す患者さんの中には膀胱機能の異常など何らかの疾患がある可能性がありますので、泌尿器科での精査をお勧めします。

【治療】

抗生物質を処方します。症状が改善してもしっかり治癒していないと再発する原因となりますので、治癒確認のため、後日(1週間後)受診していただくことをお勧めします。

高熱や倦怠感、背部痛などを伴う場合には腎盂腎炎を併発している可能性もあり、重症化するリスクもありますので、排尿時痛があれば受診することをお勧めします。

2.尿路結石症

尿路結石は、男性の7人に1人、女性の15人に1人が生涯に経験するといわれています。食生活の欧米化などが原因で、年々尿路結石にかかる人の数は増加傾向です。女性は男性よりは尿路結石になる割合が低いですが、膀胱結石の場合、頻尿や排尿時痛の原因となることがあります。

腎結石

通常無症状のことが多いですが、肉眼的血尿が出たり、腎盂尿管移行部に結石が詰まった場合は強い痛みが起こることがあります。腎機能障害の原因になることもあります。

尿管結石

尿管は細いのでこの位置に結石があると容易に尿の通過障害の原因となり、腎盂内圧が上昇することで突然の腰背部痛(疝痛発作)を引き起こします。ときに嘔吐を伴うこともあります。腎機能障害の原因になることもあります。

膀胱結石

尿と一緒に勢いよく排出できないため膀胱で結石が大きくなります。結石が原因で血尿が出たり、尿が濁ることがあります(慢性膿尿)。

【検査】

肋骨脊柱角叩打痛などの身体所見確認、検尿や血液検査および腹部超音波検査、CTなどの画像検査を行い、総合的に診断をおこないます。

【治療】

尿管結石が尿の通過障害の原因になれば、腎臓の内部(腎盂)に尿がたまった状態(水腎症)となり、疼痛や腎機能障害の原因となるため治療が必要となります。水腎症になると細菌が繁殖しやすくなり、腎盂腎炎や敗血症をおこすことがあります。結石に水腎症、発熱を伴う場合は、早急な処置(ドレナージ)を要しますので、すぐに対応可能な病院へとご紹介させていただきます。

感染を伴わない10ミリ以下の結石に対しては、結石による痛みを鎮痛剤でコントロールしつつ、水分摂取の励行や排石を促進する薬によって自然排石を期待する保存的治療を行います。症状発現後1か月以内に自然排石を認めない場合は、積極的な治療(手術)も検討します。

10ミリ以上の結石に対しては自然排石の可能性が低いため手術を検討します。手術が必要な場合は、結石破砕術が可能な病院にご紹介させていただきます。

(手術)
経尿道的膀胱砕石術

外尿道口から結石の直下まで内視鏡を挿入し、体内式衝撃波結石破砕装置(リトクラスト)やレーザーを用いて結石を破砕します。

3.膀胱がん

膀胱がんの患者さんでは、時々膀胱炎の症状(排尿時痛、残尿感、頻尿など)を合併している患者さんがおられます。膀胱炎の症状を繰り返し、なおかつ治りにくい場合は、膀胱がんが隠れていないかも考えて精査する必要があります。

【検査】

検尿や尿細胞診検査、超音波検査などの負担の少ない(痛みの少ない)検査を主体に行いますが、膀胱がんを診断するにはこれらの検査に加えて、膀胱鏡検査を行う必要があります。腫瘍の大きさによっては、CT検査やMRI検査を追加することがあります。

【治療】

① 経尿道的膀胱腫瘍切除術

膀胱がんが見つかれば、まず行う手術です。全身麻酔もしくは腰椎麻酔で、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて腫瘍を切除します。切除した腫瘍を回収し、病理検査に出して顕微鏡で詳しく検査し、膀胱がんの悪性度、深達度を診断します。約1週間程度の入院が必要になります。

表在性膀胱がんであれば、この内視鏡手術で根治が期待できます。腫瘍の数が多い場合や、膀胱の粘膜の中に広範囲にがんが散らばった状態である上皮内がん(CIS)の場合には、治療や再発予防目的に抗がん剤やBCGなどの薬剤を膀胱内に注入する「膀胱内注入療法」まで行う場合があります。これらの治療には副作用や合併症がありますが、膀胱はそのまま残るため、生活の質の低下は軽度に留まります。

一方、画像検査で転移はないものの、がん細胞が膀胱の筋肉にまで及んでいる「筋層浸潤性がん」の場合には、膀胱をすべて摘出する膀胱全摘除術が第一の選択肢となります。

② 膀胱全摘術

最近は腹腔鏡やロボット(ダヴィンチ)で手術をすることが多くなってきました。膀胱を全摘した場合、尿の通り道を再建しなければなりません。これを尿路変向といいます。尿路変向には大きく分けて2つあり、ストーマという袋を体に装着して袋に尿を出す方法と、小腸を使用して新たに膀胱を作り、それを尿道とつなげて尿道から排尿できるようにする方法の2種類があります。どちらの術式を選択するかは、がんの状態や、患者さんの希望などを総合的に判断して決定します。

③ 転移のある浸潤性膀胱がんの治療

転移がある場合、手術は困難です。第一選択は抗がん剤治療になります。

※これら①~③の治療に関しては入院加療が必要となりますので、施行可能な病院にご紹介させていただきます。

4.性感染症(淋菌感染、クラミジア感染)

女性では子宮頚管に感染します。感染しても男性ほど症状が出ないことが多いですが、おりものが増える、外陰部のかゆみ、不正出血、膀胱炎症状(頻尿、排尿痛)などの症状が起こることがあります。放置すると、腹膜炎や不妊症の原因になることがあります。性器クラミジア感染の場合、妊婦さんでは産道感染で赤ちゃんが新生児結膜炎、新生児肺炎になることがありますので注意が必要です。

【検査】

淋菌感染症、クラミジア感染症を検査する場合は綿棒で膣の分泌物を採取して検査します。

【治療】

  • 淋菌感染の場合
    現在、内服薬で淋菌感染に高い治療効果が期待できる薬剤はないため、点滴抗生剤による治療を行うことが推奨されます。
  • クラミジア感染の場合
    内服抗生剤で加療します。クラミジア感染症の場合、必ず2-3週後に再度クラミジア検査を行い治癒確認を行う必要があります。

5.間質性膀胱炎

膀胱に原因不明の慢性的な炎症がおこり、進行すると膀胱が萎縮する病気です。主な症状は、膀胱痛,頻尿,尿意切迫感などです。男性に比べて女性(特に中年以降の女性)に多く、細菌感染で起こる急性膀胱炎や尿意切迫感を来す過活動膀胱と症状は似ていますが、全く別の病気です。典型的な症状としては、尿がたまってくると膀胱に痛みを感じます。ほんの少し尿がたまっただけで痛みを感じ、1日に20回も30回もトイレに行って排尿しているような場合には、この病気の可能性を考える必要があります。

【検査】

診断には膀胱内視鏡検査で間質性膀胱炎に特有の膀胱粘膜所見を確認することが必要になります。

【治療】

① 膀胱水圧拡張術

腰椎麻酔または全身麻酔下に生理食塩水を自然落下させながら膀胱を拡張させる治療です。ハンナ病変という間質性膀胱炎に特徴的な病変がある場合は切除および焼灼を行います。反復的な治療を要することが多いですが,症状緩和には有効です。入院による治療が必要ですので、施行可能な病院にご紹介させていただきます。

② ジメチルスルホキシド(DMSO)膀胱内注入療法

DMSOは炎症抑制、筋弛緩、鎮痛などの作用があると言われ、古くから間質性膀胱炎の治療に使用されてきました。2021年4月から保険適応となり、保険診療が可能となりました。
治療の実際は、まずDMSO注入時の疼痛を緩和する目的で尿道から細いカテーテルを入れ膀胱内に麻酔薬を注入し15分程度待ちます。その後、麻酔薬を除去し、再度尿道から細いカテーテルを入れ膀胱内にDMSOを注入します。15分おしっこを我慢してもらいトイレで排尿してもらいます。この治療を2週間に1回、合計6回行います。

③ 薬物療法

残念ながら内服特効薬はないですが、古くから抗うつ剤、抗アレルギー剤などが用いられています。症状緩和に役立つ場合があります。

④ 食事指導、生活指導

香辛料(わさび、唐辛子、こしょうなど)や酸っぱいもの(柑橘類、トマト、梅干しなど)、アルコール、カフェインなどは間質性膀胱炎の症状を増悪させるとされていますので、控えめにしてもらうよう指導します。また、下半身を冷やさないこと、ストレスをためないことも大切です。

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