教えておしっこ博士
ふだん何気なくやっているおしっこですが、実はいろいろな病気のサインである場合があります。ここでは、おしっこに関する情報を簡単にまとめています。
赤いおしっこが出たのですが・・・
おしっこを作る腎臓やおしっこの通り道である尿管・膀胱・尿道に何らかの異常が生じると、おしっこの中に血液(赤血球)が混じるようになります。これを血尿と呼びます。血尿には自分の目で見て判断できる『肉眼的血尿』と、肉眼ではわからず尿定性試験や顕微鏡検査で初めてわかる『尿潜血・顕微鏡的血尿』があります。尿潜血や顕微鏡的血尿は健康診断で指摘されてわかることも多くなっています。
血尿の色について
おしっこに血液が混じってある程度時間が経過している場合は、茶色~黒っぽくなります。出血後あまり時間が経過していない場合は鮮やかな赤やピンク色を呈します。
血尿を起こす主な病気
血尿の原因のほとんどは大きく4つに分けられます。
- 尿路結石(腎結石、尿管結石など)
- 尿路感染(膀胱炎、腎盂腎炎など)
- 泌尿器がん(腎がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、尿道がん)
- 腎臓病(急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎など)
排尿時痛や頻尿を伴う場合は尿路感染症の可能性があり、女性では膀胱炎や腎盂腎炎、男性では急性前立腺炎などで炎症を起こし出血している可能性があります。
わき腹や背中、下腹部の突然の痛みを伴う場合は尿路結石の可能性があります。
排尿時の疼痛や頻尿などの症状を伴わない、いわゆる無症状の血尿は悪性腫瘍(膀胱がんや腎がんなど)の疑いがあります。
その他、腎炎などの糸球体疾患やナットクラッカー症候群などの血管の異常、突発的な腎出血などで血尿が出る場合があります。
血尿の場合に行う検査
当院では、問診、身体診察所見を参考に、検尿、採血、エコー検査、膀胱鏡検査、尿細胞診検査などの検査を行います。必要に応じてCT撮影まで行うこともあります。
肉眼的血尿が出た場合や顕微鏡的血尿を指摘された場合には、症状がないからと放っておかずに早めの受診をご検討ください。
おしっこが濁っているのですが・・・
健康な場合のおしっこは淡黄色~淡黄褐色ですが、何らかの原因で濁ることがあります。おしっこが濁る原因には大きく分けて、食事の影響、尿路感染症、血尿の3つがあります。女性の場合は、おりものや生理の血液でおしっこが濁って見えることがあります。
食事の影響
動物性脂肪の多い肉類などのたんぱく質や、シュウ酸を多く含むホウレン草、ゴボウ、ココア、バナナなどの食品をとり過ぎると、おしっこの中にシュウ酸カルシウムの結晶ができ、それによっておしっこが白く濁ることがあります。この場合おしっこの濁り自体には問題ありませんが、シュウ酸カルシウムがおしっこの中に多く排出され結晶化すると尿路結石のリスクが高まりますので、食生活を見直す必要があります。
尿路感染症
おしっこへの細菌感染に伴いおしっこの中に白血球が出現してくると、おしっこが白く濁ってきます。おしっこが濁って発熱がある場合は、腎盂腎炎、急性前立腺炎、精巣上体炎などの病気が考えられます。発熱はないものの、排尿時痛、残尿感などの症状が有る場合は、膀胱炎、慢性前立腺炎、尿道炎などの病気が考えられます。
おしっこの濁りは性病(性感染症)によって生じることもあります。おしっこの濁り以外に症状が起こらない場合もあり気付かないまま感染が広がってしまうことがあります。性感染症は男女ともに不妊の原因になるものがあり、放置していると母子感染を起こす可能性もあります。男女間で症状の強さや内容が異なることも多いため、性感染症の場合はパートナーの治療も不可欠となります。
血尿
血尿でおしっこが濁って見えることがあります。血尿の原因については血尿を起こす主な病気についてをご覧ください。
おしっこが泡立つのですが・・・
おしっこをした時に泡立ちが気になったことはありませんか。
ここではおしっこの泡立ちが意味するところを解説します。
おしっこの泡立ちが起こる原因
- おしっこの勢いがとても良い
- トイレの水の粘度が高い
- 便器掃除に使った洗剤が残っている
- おしっこが濃縮している
- おしっこにタンパクが混じっている
- おしっこに糖が混じっている
おしっこで排泄される物質の1つにウロビリノーゲンがありますが、ウロビリノーゲンには界面活性作用があり石鹸のような作用も持ち合わせており、勢いよくおしっこした場合は泡立つことがあります。しかし、この泡はすぐ消えるため異常ではありません。一方、おしっこの泡立ちが長く継続する場合は肝臓病や腎臓病、糖尿病などの異常があるかもしれません。気になる方はご相談ください。
おしっこがにおうのですが・・・
健康な人のおしっこでも、排尿後しばらく時間が経つとおしっこの成分が分解し、アンモニアが発生します。したがって、おしっこをした後そのまま流さずにおくと次にトイレを使う時に不快なアンモニア臭がします。しかし、排尿直後のおしっこからアンモニア臭がするようであれば、それは異常です。原因としては、膀胱炎などの尿路感染症を疑います。また果物のような甘ったるいにおいがする場合は重度の糖尿病の可能性があります。
おしっこのにおいがいつもと違って気になる場合は受診をご検討ください。
おしっこの量がいつもと違うのですが・・・
健常成人の1日の尿量は1000-1500mL程度、排尿回数は1日4~6回程度ですが、水分摂取量や体の状態によって変化します。
おしっこの量が多い場合
1日の尿量が3000mLを超える場合を多尿と言います。糖尿病などの内分泌疾患、水分の過剰摂取、薬剤(利尿剤)による尿量の増加が原因です。多尿の場合は膀胱や尿道の機能に問題がなくても何回もトイレに行くことになります。
おしっこの量が少ない場合
1日の尿量が400mL以下になった場合を一般に乏尿(ぼうにょう)と呼んでいます。乏尿となる代表的な原因は急性腎不全で、腎機能の急激な低下により尿を作る機能が弱まっています。その他、高度の脱水症なども乏尿の原因となります。さらに尿量が減少し、1日の尿量が100mL以下になった場合は無尿(むにょう)といいます。
おしっこがまったく出ない場合
おしっこがまったく出ない原因は2つ考えられます。
1つは、腎臓はきちんとおしっこを造って膀胱まで運んでいるのに排尿しようと思っても出せないという状態です。これを尿閉(にょうへい)といいます。尿閉を来す代表的な疾患は前立腺肥大症(膀胱出口部を肥大した前立腺がふさいでしまうため)ですので、尿閉になるのは男性が多いということになります。前立腺が大きい人のほうが尿閉になりやすい傾向があります。前立腺肥大症の患者さんでは、長時間の座位、飲酒、咳止め薬、感冒薬、精神安定剤、不整脈の薬などが尿閉の誘因になることがありますので注意が必要です。また、直腸がんや子宮がんの手術後の患者さんでは膀胱の働きを調整している神経が障害されて尿閉になる場合がありますので、このような場合は女性でも尿閉になることがあります。
おしっこがまったく出ないもう1つの原因は腎臓の機能低下のためにおしっこが造られなくなり、膀胱に貯まる尿が少なくなることです。これは腎不全と呼ばれる状態です。しかし、このような状態になる前に腎臓の機能低下の症状や所見が出てきますので、いきなり「尿がまったく出ない」原因になることはあまりありません。
健康診断で尿タンパクが出ていると言われたのですが・・・
尿タンパクとは文字通り尿中に排泄されるタンパクのことです。タンパクは体にとって重要な成分であり、健康な場合は尿中に排泄されません。
尿タンパクが陽性になるのはどんな時ですか?
おもに腎臓の糸球体(しきゅうたい)という、ろ過装置が破綻した時です。糖尿病や慢性糸球体腎炎、腎硬化症、ネフローゼ症候群など、種々の病気が原因で起こります。健康であっても、過度の運動時や体位変換、後屈などで陽性となることがあります。
尿タンパクの基準値は、定性検査では陰性(-)は15㎎/dL未満です。尿タンパクの程度が大きいほど心血管病変や総死亡リスクが高まるため、尿タンパクが陽性と言われた場合は早めの受診をご検討ください。
どのような検査を行いますか?
まず臨床的な症状(高血圧やむくみ)の有無を確認します。
異常が疑われる場合は腎機能を確認するために詳しい尿検査や血液検査を行い、必要に応じて画像検査や、その他必要な検査を行います。
- 尿検査、血液検査、画像検査や病理検査における異常
- 糸球体ろ過量の低下
上記①②のいずれか、または両方が3か月以上続く場合、慢性腎臓病を疑います。
うちの子、おねしょするんですが・・・
夜寝ている間の尿もれは、5歳未満の子どもではおねしょといいます。5歳以降で月1回以上のおねしょが3か月以上続く場合は「夜尿症(やにょうしょう)」と診断され、治療が必要な場合があります。
- 夜尿症の原因は何ですか?
- 寝ている間に作られるおしっこの量が多すぎる
- 膀胱におしっこを十分にためられない
- 膀胱がおしっこであふれそうになっても起きられない
これらの原因で寝ている間に尿もれをしてしまいます
夜尿症の子供はどれぐらいいますか?
- 日本の小中学生を含む5~15歳の約80万人(推定)に夜尿症があると考えられています。
夜尿症は治りますか?
- 一般的に夜尿症は成長とともに自然に治癒しますが、1週間で夜尿が3回以上ある場合は、3回未満と比べて自然に治りにくいといわれています。また、早めに治療をしたほうが治癒率が高いという報告もあります。
夜尿症と診断された場合、どんな治療をするのですか?
- おねしょ記録を参考にまず生活改善に取り組みます。
- それでも改善しない場合は薬物療法などを検討します。
保護者のみなさまへ
おねしょは子どもの性格や親のしつけとは関係ありません。
あせらず、怒らず、ほかの子どもと決して比べず、辛抱強く治療していきましょう。
おしっこの調子が悪いのですが・・・
膀胱には蓄尿(おしっこを貯める)と排出(貯まったおしっこを体外へ排泄する)という2つの機能があり、これらの機能に異常をきたした状態を排尿障害といいます。
排尿障害には蓄尿障害(おしっこをうまく貯められない状態)と、排出障害(おしっこをうまく出せない状態)の2種類があります。
蓄尿障害の場合の主な症状 |
おしっこが近い おしっこを我慢できない おしっこが漏れる |
排出障害の場合の主な症状 |
おしっこの勢いが弱い おしっこをするのに時間がかかる おしっこの後にまだ残っている感じがある おしっこの後にポタポタと垂れる |
【1】蓄尿障害(おしっこをうまく貯められない状態)
(蓄尿症状)
頻尿
「おしっこが近い、おしっこの回数が多い」という症状を頻尿といいます。朝起きて就寝するまでの排尿回数が8回以上の場合を昼間頻尿、就寝してから夜間におしっこのため1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。夜間排尿は加齢とともに頻度が高くなり日常生活に支障を来して困る場合があります。夜間頻尿のため夜2回以上起きなければならず、本人または介護者が治療を希望している場合は、治療の対象となります。
尿意切迫感
突然起こる抑えきれない尿意で、トイレにあわてて駆け込む状態です。
遺尿症
昼夜問わず自分の意思と関係なくおしっこが出てしまう状態。特に夜間のみに起こる場合を夜間遺尿症(夜尿症)といいます。
尿失禁
おしっこが漏れる状態。代表的なものは以下の5つです。
- 腹圧性尿失禁 咳やくしゃみ、重いものを持った時に漏れる状態
- 切迫性尿失禁 尿意切迫感の結果漏れる状態
- 混合性尿失禁 腹圧性と切迫性の両方を併せ持つ状態
- 溢流性尿失禁 排尿障害で膀胱に大量に残ったおしっこが溢れ出す状態
- 機能性尿失禁 トイレまでの移動や脱衣に時間がかかり漏れる状態
蓄尿障害を起こす主な疾患 |
過活動膀胱、神経因性膀胱(脊髄疾患、糖尿病、脳血管疾患などによる)、膀胱炎、肥満などの生活習慣病、軽度の骨盤臓器脱、 など |
【2】排出障害(おしっこをうまく出せない状態)
(排出症状)
- 尿勢低下 おしっこの勢いが弱い状態
- 尿線分割・尿線散乱 おしっこが2本に分かれたり飛び散ったりする状態
- 尿線途絶 おしっこの途中で尿線が途切れる状態
- 排尿遷延 おしっこが出始めるまでに時間がかかる状態
- 腹圧排尿 おなかに力を入れてイキんでおしっこすること
- 終末滴下 おしっこの終わりごろにおしっこのしずくがポトポト垂れる状態
(排尿後症状)
- 残尿感 おしっこの後にまだおしっこが残っている感じがすること
- 排尿後滴下 おしっこの後に下着をはいたときにおしっこが少し漏れる状態
排出障害を起こす主な疾患 |
前立腺肥大症、前立腺がん、膀胱がん、神経因性膀胱、尿道狭窄症、重度の骨盤臓器脱、骨盤内臓器の手術後(直腸がん、婦人科がん)、服用薬の副作用、など |
排尿障害は生活の質に直接影響を与えます。排尿障害が改善することで排尿のことを気にせずに趣味や旅行、スポーツを楽しめるようになるかもしれません。お悩みの方はぜひご相談ください。
夜に何回もおしっこに起きて困っています
夜間におしっこに何回も起きる方の場合、生活習慣を改善することで症状が改善することがあります。ここでは生活上の注意点についてお答えします。
【食事、水分摂取の注意点】
- 寝る前3時間の飲水は控えましょう
- カフェインを含む飲料やアルコールは控えましょう
- 就寝中に水分摂取をするのはやめましょう
どうしても口が乾く場合はうがいでがまんしましょう
- 夕食時に塩分、糖分を摂りすぎないようにしましょう
- 貧血にならないようにバランスよく食べましょう
【運動について】
- 夕方に20~30分程度軽い運動をしましょう
- 糖尿病で治療中の人は夕食を摂って1時間ぐらいしてから運動しましょう
【昼寝について】
- 昼寝は脳だけでなく体力回復にも効果的ですが、昼寝の時間が長いと夜間不眠になるため、15~30分以内にするよう心がけて下さい。昼寝をする場合は枕などを挟んで足を少し上げましょう。
夜間頻尿で夜に2回以上起きなければならず、本人または介護者が治療を希望している場合は治療の対象となります。生活習慣改善を試みても症状の改善がない場合はご相談ください。
おしっこをする時に痛みがあるのですが…
おしっこをする時に痛みがある場合、以下の病気の可能性があります。
1.急性膀胱炎
おしっこをする時に痛みを起こす最も一般的な病気です。急性膀胱炎は女性に多く、頻尿(おしっこが近い)、血尿(おしっこに血が混じる)、排尿時痛(おしっこを出す時の痛み)が特徴的な症状です。多くは排尿の終わりごろに尿道に不快な痛みを感じます(排尿終末時痛)。尿道から細菌が膀胱へ侵入することによって起こり、尿検査により炎症細胞(白血球)や細菌が認められます。抗生剤治療で数日以内に完治することがほとんどです。高熱や倦怠感、背部痛などを伴う場合には腎盂腎炎を併発している可能性もあり、重症化するリスクもありますので、受診することをお勧めします。
2.前立腺炎
男性でおしっこをする時に痛みを起こす病気の1つに前立腺炎があります。前立腺炎は尿道から侵入した細菌によって起こる細菌性前立腺炎と非細菌性前立腺炎があり、いずれも排尿時痛以外に、頻尿、会陰部(陰嚢と肛門の間の部位)や下腹部の不快感や痛みなど多彩な症状があります。細菌性前立腺炎は、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあり、適切に治療を行わないと慢性前立腺炎に移行することがあります。非細菌性前立腺炎の原因は明らかではありませんが、前立腺に慢性の炎症が起こる病気です。長時間のデスクワーク、乗り物移動、運転など、前立腺への振動や接触などの刺激が関連する場合があります。慢性炎症の場合は治りにくく、再発や悪化を繰り返すことがあるため、根気強い治療が必要です。
3.尿道炎
細菌感染や尿道の粘膜に傷がついたことが原因で起こります。おしっこの出始めに痛む場合は、クラミジア性尿道炎、淋菌性尿道炎などの性感染症が原因であることがあるので注意が必要です。淋菌性尿道炎の場合は排尿時に焼けつくような痛みやかゆみ、不快感、尿道から黄色や白色の膿が出て尿が濁る、尿の出口が赤く腫れる、頻尿などの症状が現れることが多いですが、中には自覚症状のない場合もあります。女性では症状が軽い傾向にあり、気づかないうちに感染が広がるケースもあります。尿道炎は放置すると尿道狭窄となることが多く、おしっこを出すのに支障をきたすようになるため、早めの受診をお勧めします。
4.その他
尿道結石、間質性膀胱炎、膀胱・尿道の悪性腫瘍などの疾患が排尿時痛の原因となることもあります。長期間症状の改善がみられない場合には受診をご検討ください。