男性更年期障害(LOH症候群)
中高年男性で、何となく調子が悪い、最近疲れやすい、眠れない、突然のほてりや発汗がある、性欲が低下した、やる気がしない、イライラする、EDになった、などの症状が続けば男性更年期障害かもしれません。更年期障害といえば女性特有だと思われがちですが実は男性にもあり、"性ホルモン"の低下やバランスの乱れが原因とされています。
女性の更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少する閉経前後のおよそ10年間に起こり、閉経後は徐々に体が慣れて閉経後5年ほどで症状は治まっていきますが、男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)は一般的に中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。男性ホルモンが減少する速度や度合い、時期は個人差がありますが、40歳代以降であればどの年代でも起こり得ます。このような男性ホルモンの減少による更年期障害を加齢性性腺機能低下症、またはLOH(late−onset hypogonadism:遅れてやって来る性腺機能低下)症候群といいます。
男性と女性の更年期障害の違い | ||
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男性 | 女性 | |
原因 | 男性ホルモンの低下 | 女性ホルモンの低下 |
時期 | 40歳代以降いつでも | 閉経の前後5年(50歳前後) |
期間 | 終わりがない | 閉経後5年で症状安定 |
男性更年期障害で起こる症状 | ||
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身体症状 | 精神症状 | 性機能症状 |
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男性更年期障害とうつ病は症状が似ています。しかし、男性更年期障害による症状は、死にたくなる気持ち(希死念慮)が起こるほど重くはありません。希死念慮があるようであれば、うつ病の可能性が高いので心療内科を受診して下さい。
男性更年期障害の治療の流れ
- まず男性更年期障害の症状に関する質問票に記入していただき、重症度判定を行います。
- 次に採血を行います。測定項目は以下の通りです。
男性ホルモン、糖尿病関連、高脂血症関連、赤血球、肝機能、腎機能
さらに前立腺がんの場合は男性ホルモンを補充する治療をすると前立腺がんが悪化しますので、前立腺がんの可能性がないか、前立腺特異抗原(PSA)の測定も行います。 - 超音波検査を行い前立腺肥大症がないかを確認します。これは男性ホルモンの補充療法を行うと前立腺肥大症が悪化することがあるためです。
- 1週間ほどで採血の結果が出ます。男性ホルモンの値が基準値以下であれば、注射による男性ホルモンの補充を行います。当院では注射剤(エナント酸テストステロン)を2~4週間毎に筋肉注射します。投与の間隔は症状により変わります。
採血の結果、男性ホルモンの値が正常であれば男性更年期障害ではないため、他の科(心療内科など)への受診をお勧めします。
男性更年期の症状が強い場合は、漢方薬を併用する場合もあります。排尿障害がある場合も治療を検討することがあります。 - EDがある場合はED治療薬の処方(ただし、保険適用外の自由診療になります)も可能です。
- 男性ホルモン採血はホルモンの日内変動があるため午前中の採血が必要です。受診をお考えの際は午前の外来にお越しいただくようお願いいたします。
男性ホルモン補充療法ができない患者さん
以下の患者さんには男性ホルモン補充療法を行えません
- 前立腺がん、男性乳がんがある
- 重度の前立腺肥大症がある
- 多血症である
- 重度肝機能障害、重度の腎機能障害がある
- 重度の高血圧、うっ血性心不全がある
- 睡眠時無呼吸症候群がある
- 抗凝固剤(血をサラサラにするお薬)を服用している
- PSAの値が治療前2.0ng/ml以上ある