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男性で血尿が出る場合に考えられる疾患

  1. 尿路結石症(腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)
  2. 腎臓病(急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎)
  3. 前立腺肥大症
  4. 急性前立腺炎
  5. 泌尿器がん(腎がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん、前立腺がん)

1.尿路結石症(腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)

尿路結石は、尿路(腎臓~尿管~膀胱~尿道)に結石が存在する病気のことをいいます。男性の7人に1人、女性の15人に1人が生涯に経験するといわれています。食生活の欧米化などが原因で、年々尿路結石にかかる人の数は増加傾向です。尿中の物質がなんらかの原因によって腎で結晶化し、それが核となり凝集、成長を繰り返して結石となります。上部尿路結石(腎結石、尿管結石)が全体の約96%を占め、食生活の欧米化等によりここ10年で急増しています。

結石の成分としてはシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムが多いですが、他にリン酸マグネシウムアンモニウム結石、尿酸結石、シスチン結石などがあります。

腎結石

通常無症状のことが多いですが、肉眼的血尿が出ることや、腎盂尿管移行部に結石が詰まった場合は強い痛みが起こることがあります。腎機能障害の原因になることもあります。

尿管結石

尿管は細いのでこの位置に結石があると容易に尿の通過障害の原因となり、腎盂内圧が上昇することで突然の腰背部痛(疝痛発作)を引き起こします。時に嘔吐を伴うこともあります。腎機能障害の原因になることもあります。

膀胱結石

尿と一緒に勢いよく排出できないため膀胱で結石が大きくなります。結石が原因で血尿が出たり、尿が濁ったりすることがあります(慢性膿尿)。

尿道結石

膀胱結石が排出される場合に尿道に詰まることがあります。そうすると、尿の出が急に悪くなり、膀胱に尿がたまって下腹部痛とともに、全く出なくなることがあります(尿閉)。排尿時痛、血尿などの症状が起こることもあります。症状改善のため、積極的に治療(除去術)を行う必要があります。

【検査】

身体所見診察、検尿や血液検査および腹部超音波検査、CTなどの画像検査を行い、総合的に診断をおこないます。

【治療】

尿管結石が尿の通過障害の原因になれば、腎臓の内部(腎盂)に尿がたまった状態(水腎症)となり、疼痛や腎機能障害の原因となるため治療が必要となります。水腎症になると細菌が繁殖しやすくなり、腎盂腎炎や敗血症をおこすことがあります。結石に水腎症、発熱を伴う場合は、早急な処置(ドレナージ)を要しますので、すぐに対応可能な病院へとご紹介させていただきます。

感染を伴わない10ミリ以下の結石に対しては、結石による痛みを鎮痛剤でコントロールしつつ、水分摂取の励行や排石を促進する薬によって自然排石を期待する保存的治療を行います。症状発現後1か月以内に自然排石を認めない場合は、積極的な治療(手術)も検討します。

10ミリ以上の結石に対しては自然排石の可能性が低いため手術を検討します。手術が必要な場合は、結石破砕術が可能な病院にご紹介させていただきます。

(手術)
経尿道的結石破砕術(TUL)

外尿道口から結石の直下まで内視鏡を挿入し、体内式衝撃波結石破砕装置(リトクラスト)やレーザーを用いて結石を破砕します。

体外衝撃波砕石術(ESWL)

長期間排石しない10ミリ以下の結石がよい適応となります。透視下に結石が確認できれば結石に焦点をしぼって体外から衝撃波をあてて破砕します。細かくなった破砕片は尿と一緒に排出されます。

2.腎臓病(急性腎炎、慢性腎炎)

急性腎炎とは、突然濃い血尿(褐色、コーラ色)が出て、軽度の腎機能低下と高血圧、むくみなどを伴う病気です。A群β溶連菌が代表的な原因菌で、小児~若年者に多くみられます。高度な血尿と蛋白尿をきたし、時に急激な腎機能低下を認めます。

慢性腎炎とは、たんぱく尿や血尿(多くの場合両方)が持続するもので、一部は腎不全へと進行します。たんぱく尿が多いほど腎不全への進行の危険性は高くなります。

検尿(尿たんぱくの確認)、採血(腎機能の確認)などの検査の結果、これらの病気を疑う場合は、腎臓内科専門医による診断、治療が必要となりますので、腎臓内科にご紹介させていただきます。

3.前立腺肥大症

前立腺とは?

前立腺は男性のみに存在する臓器です。重さは20g程度、大きさは栗の実ぐらいで膀胱の出口にあり尿道を取り巻くように存在しています。前立腺は精液の一部となる前立腺液を分泌して精子に栄養を与えたり保護したりする役割があります。
前立腺肥大症は尿道周囲の前立腺組織が肥大した状態です。良性の肥大であり、がんではありません。男性の約80%が80歳までに前立腺肥大症を発症すると言われています。前立腺肥大症のおもな症状は、下記の【症状】欄に記載していますが、大きな前立腺肥大症では、尿道粘膜の充血が起こり前立腺部の尿道粘膜から出血して、血尿が出やすくなります。

(山口 脩,他:図説 下部尿路機能障害)

【症状】
  • 膀胱内の尿を全部出せない
  • 頻繁に尿意をもよおす
  • 尿が途中で何度も途切れる
  • 急に尿意をもよおす
  • 尿を出したり止めたりするのが困難
  • 尿の勢いが弱い
  • 排尿時にいきむ必要がある
【検査】

症状について質問票(国際前立腺症状スコア)で詳しい問診を行い、症状をスコア化して症状の程度を把握します。直腸診で前立腺の腫脹を確認することで診断できます。超音波検査で前立腺の詳しい状況や、排尿後の残尿の状況を確認して治療方針を検討します。

【治療】

治療は薬物療法と手術療法があります。薬物療法では尿道の緊張をゆるめて排尿しやすくする薬剤や、前立腺のサイズを小さくするホルモン剤を用います。薬物療法が無効で排尿障害の程度が重い場合には、内視鏡による手術を検討します。その場合は、電気メスやレーザーなどを用いた侵襲の少ない手術を行っている病院にご紹介いたします。

4.急性前立腺炎

急性前立腺炎は前立腺全体に細菌が感染することで起こります。敗血症という致命的な状態につながる可能性があるため、迅速な治療が必要です。急性細菌性前立腺炎の明確な機序は未解明ですが、最も可能性があるのは感染した尿の前立腺への逆流と考えられています。

【症状】

38℃以上の発熱、排尿痛、排尿困難、頻尿、会陰部(陰部から肛門のあたり)の痛み、会陰部不快感などが主な症状です。時に尿閉(尿がいきんでも全く出なくなる状態)になることもあります。

【検査】

尿検査、採血、身体診察所見等をもとに診断します。

【治療】

抗生物質による治療が必要になります。発熱などの症状は治療開始から数日で改善しはじめますが、完治するまでしっかり治療をしないと耐性菌ができて治療が困難になることがあります。炎症が強い場合や全身状態が悪い場合は、入院治療が必要になりますので、そのような場合は入院可能な医療機関をご紹介して治療を受けていただけるようにします。

5.泌尿器がん(腎がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん、前立腺がん)

腎がん

腎臓は腎実質と腎盂(じんう)から構成されていますが、腎実質に発生するがんです。腎細胞がんとも呼びます。腎盂がんとはまったく異なるがんです。腎がんは50-70歳が好発年齢で、10万人当たりの発生率は男性で7人、女性で3人程度です。近年、腎がんの患者さんは増加傾向にあります。腫瘍が小さい場合、無症状であることがほとんどで、近年では健診での超音波検査やCTにより偶然発見されるケースが増加しています。進行すると、血尿、疲労感、痛み、貧血などの症状が出現してきます。腎がんの4人に1人は肺、リンパ節、骨などに転移が発見されるといわれており、進行すれば呼吸困難や痛みなどの症状が出現することがあります。腎がんが一度転移すると根治することは極めて困難であるため、早期発見のためにも健診を受けることが大切です。

【検査】

腫瘍が腎がんなのか良性の腫瘍なのかを判断するために、超音波検査やCT検査が必要になります。

【治療】

転移のない腎がんの標準治療は手術になります。

① 腎部分切除術

がんが小さく(一般的に4cm未満)、腎臓の正常な部分を温存できる場合は、腹腔鏡、もしくはロボットを用いた腎部分切除術(腎臓からがんの部分だけを切り取り、正常な部分を温存する術式)を選択することが多くなっています。

② 腹腔鏡下腎摘除術

腎部分切除術が適応とならない場合は、腎臓をがんとともに摘出する本術式が一般的な治療となっています。

③ 根治的腎摘除術(開腹)

がんが大きすぎて(10cm以上)腹腔鏡手術が困難な場合は、開腹手術を要することがあります。

転移のある腎がんでも可能な限り上記①~③の手術を優先することが一般的です。その他、薬物療法として免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬を用いて治療を行います。

腎盂・尿管がん

腎盂・尿管がんは腎臓で生成された尿の通り道である腎盂や尿管内に発生する悪性腫瘍で、組織は膀胱がんと同じ尿路上皮がんが主となります。腎盂・尿管がんの発生頻度は10万あたり約0.5人で、女性よりも男性に多い傾向があります。血尿を契機に見つかることや、無症状ながら人間ドックの超音波検査の結果見つかることがあります。

【検査】

検尿、尿細胞診検査、CT検査、MRI検査などの検査を行い診断します。膀胱にがんが併発する場合があるため膀胱鏡検査を行うこともあります。これらの検査でも診断がつかない時は尿管鏡検査を行う場合があります。尿管鏡検査は麻酔をかけて尿管に細い内視鏡を入れて直接尿管内を観察し、腫瘍の生検まで行う検査ですが、入院が必要になります。当院では尿管鏡検査は施行できませんので、尿管鏡検査が必要な場合は、施行可能な病院にご紹介させていただきます。

【治療】

転移のない腎盂・尿管がんの場合は外科的治療(手術)が主体となります。尿管下端部を残すと、残した尿管にがんが発生しやすいことを考慮して、がんが発生した片側の腎臓、尿管、さらに膀胱壁の一部も含めた腎尿管全摘、膀胱部分切除を施行するのが一般的です。腹腔鏡下手術を行うことが多くなっています。転移がある場合は、抗がん剤による治療が必要になります。

膀胱がん

膀胱がんの患者さんで最も多い症状は無症候性肉眼的血尿(痛みを伴わない血尿)ですが、まれに膀胱炎の症状(排尿時痛、残尿感、頻尿など)を契機に膀胱がんが見つかる患者さんもおられます。膀胱炎の症状を繰り返し、なおかつ治りにくい場合は、膀胱がんが隠れていないかも考えて精査する必要があります。

【検査】

検尿や尿細胞診検査、超音波検査などの負担の少ない(痛みの少ない)検査を主体に行いますが、膀胱がんを診断するにはこれらの検査に加えて、膀胱鏡検査を行う必要があります。腫瘍の大きさによっては、CT検査やMRI検査を追加することがあります。

【治療】
① 経尿道的膀胱腫瘍切除術

膀胱がんが見つかれば、まず行う手術です。全身麻酔もしくは腰椎麻酔で、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて腫瘍を切除します。切除した腫瘍を回収し、病理検査に出して顕微鏡で詳しく検査し、膀胱がんの悪性度、深達度を診断します。約1週間程度の入院が必要になります。

表在性膀胱がんであれば、この内視鏡手術で根治が期待できます。腫瘍の数が多い場合や、膀胱の粘膜の中に広範囲にがんが散らばった状態である上皮内がん(CIS)の場合には、治療や再発予防目的に抗がん剤やBCGなどの薬剤を膀胱内に注入する「膀胱内注入療法」まで行う場合があります。これらの治療には副作用や合併症がありますが、膀胱はそのまま残るため、生活の質の低下は軽度に留まります。

一方、画像検査で転移はないものの、がん細胞が膀胱の筋肉にまで及んでいる「筋層浸潤性がん」の場合には、膀胱をすべて摘出する膀胱全摘除術が第一の選択肢となります。

② 膀胱全摘術

最近は腹腔鏡やロボット(ダヴィンチ)で手術をすることが多くなってきました。膀胱を全摘した場合、尿の通り道を再建しなければなりません。これを尿路変向といいます。尿路変向には大きく分けて2つあり、ストーマという袋を体に装着して袋に尿を出す方法と、小腸を使用して新たに膀胱を作り、それを尿道とつなげて尿道から排尿できるようにする方法の2種類があります。どちらの術式を選択するかは、がんの状態や、患者さんの希望などを総合的に判断して決定します。

③ 転移のある浸潤性膀胱がんの治療

転移がある場合、手術は困難です。第一選択は抗がん剤治療になります。

※これら①~③の治療に関しては入院加療が必要となりますので、施行可能な病院にご紹介させていただきます。

前立腺がん

前立腺にできる悪性腫瘍です。前立腺がんになると血液中のPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーが上昇することが知られています。PSAは他のがんでは上昇しないため信頼性の高い検査です。PSA検査の普及とともに前立腺がんの発見が増加しています。前立腺がんの生涯罹患率は高く、男性の6~7人に1人が罹患すると言われています。国立がん研究センターの2016年の予測では前立腺がんの罹患率は男性の第1位、全体で第4位であり、毎年多くの方に前立腺がんが見つかっています。

【前立腺がんの原因】

加齢、男性ホルモン、遺伝的要因のほか、動物性脂肪の多い欧米型の食事や乳製品の関連が指摘されています。親兄弟が前立腺がんにかかった人は、そうではない人と比べて前立腺がんが発生するリスクが2.4倍から5.6倍とされています。前立腺がんの家族歴がある方は、定期的な検査をご検討ください。

【前立腺がんの特徴】

前立腺がんは高齢者に多く初期には自覚症状がほとんどありません。他のがんに比べると比較的ゆっくりと進行します。以下のような特徴があります。

  • 高齢者(60歳以上の男性)に多い
  • 男性ホルモンががんの増殖に関与している
  • 比較的進行はゆるやかである
  • 初期には自覚症状がない
【前立腺がんの症状】

早期にはほとんど症状がありません。進行すると尿が出にくいなどの前立腺肥大症に似た症状がみられることがあります。かなり進行してリンパ節や骨などに転移が起こると腰痛や歩行困難などの症状が現れます。

【前立腺がんの検査・診断】

日本泌尿器科学会では、50歳以上の男性に一度はPSA検査(血液検査)を受けることを推奨しています。PSAの基準値は各医療機関で微妙に異なりますが、大体4以下が正常値です。健康診断や検診で受けたPSA検査の数値が4以上の場合、泌尿器科専門医への受診が勧められます。当院では、まず直腸診やエコー検査(状況に応じてMRI検査)を行い患者さんの状態を把握します。これらの検査で前立腺がんの疑いが低い場合は定期的な経過観察をお勧めします。一方、前立腺がんの疑いがある場合は、確定診断のために前立腺生検が必要になりますが、生検は入院施設のある病院で行うのが一般的で当院では施行しておりませんので、生検が必要な患者さんはご紹介させていただきます。

【前立腺がんの治療】

前立腺生検でがんが検出された場合は、がんの進行度の診断(病期診断)を行い、治療方針を考える必要があります。病期診断のために必要な検査には、CT、骨シンチグラフィ、MRIなどがあります。

(1) 限局性がん(転移が無いがん)の場合

前立腺がんの治療方針は病期(ステージ)によって異なります。限局性がん(転移が無い前立腺がん)は、PSAの数値、生検で得られた前立腺がん組織の悪性度(グリソンスコア)、ステージを組み合わせたリスク分類に従って治療方針が決定されます。

① 監視療法

非常にリスクの低い前立腺がん患者さんに対して即時治療を行わず、3~6か月ごとにPSA検査を行いながら最適な治療(手術や放射線治療)開始のタイミングを見計らう治療方針です。

② 手術

前立腺全体と精嚢を摘出する根治療法です。前立腺内にとどまっている早期がんであれば根治の可能性が高い治療です。開腹して行う方法、腹腔鏡を用いて行う方法、ロボットを用いて行う方法があります。

③ 放射線療法

前立腺に放射線を当ててがん細胞を死滅させる根治療法です。前立腺内に放射線源を入れる内照射(小線源療法)と、体外から放射線を照射する外照射(IMRTや重粒子線治療)があります。

(2) 転移性がんの場合

ホルモン療法や抗がん剤治療を行います。前立腺がんは男性ホルモンによって増殖するため、男性ホルモンの産生や働きを抑える薬剤を用いた治療(ホルモン療法)が有効です。ホルモン療法は効果が非常に高いですが、根治的な治療ではないため治療を継続する必要があります。抗がん剤治療はホルモン療法が効きにくい、または効かない場合に検討されます。

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