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男性の頻尿の場合に考えられる疾患

  1. 前立腺肥大症
  2. 急性前立腺炎
  3. 過活動膀胱
  4. 神経因性膀胱
  5. 尿路結石症
  6. 膀胱がん

1.前立腺肥大症

前立腺とは?

前立腺は男性のみに存在する臓器です。重さは20g程度、大きさは栗の実ぐらいで膀胱の出口にあり尿道を取り巻くように存在しています。前立腺は精液の一部となる前立腺液を分泌して精子に栄養を与えたり保護したりする役割があります。

前立腺肥大症は尿道周囲の前立腺組織が肥大した状態です。良性の肥大であり、がんではありません。男性の約80%が80歳までに前立腺肥大症を発症すると言われています。男性の頻尿は前立腺肥大症の初期症状の場合が多いため最初に確認します。

(山口 脩,他:図説 下部尿路機能障害)

(山口 脩,他:図説 下部尿路機能障害)

【症状】
  • 膀胱内の尿を全部出せない
  • 頻繁に尿意をもよおす
  • 尿が途中で何度も途切れる
  • 急に尿意をもよおす
  • 尿を出したり止めたりするのが困難
  • 尿の勢いが弱い
  • 排尿時にいきむ必要がある
【検査】

症状について質問票(国際前立腺症状スコア)で詳しい問診を行い、症状をスコア化して症状の程度を把握します。直腸診で前立腺の腫脹を確認することで診断できます。超音波検査で前立腺の詳しい状況や、排尿後の残尿の状況を確認して治療方針を検討します。

【治療】

治療は薬物療法と手術療法があります。薬物療法では尿道の緊張をゆるめて排尿しやすくする薬剤や、前立腺のサイズを小さくするホルモン剤を用います。薬物療法が無効で排尿障害の程度が重い場合には、内視鏡による手術を検討します。その場合は、電気メスやレーザーなどを用いた侵襲の少ない手術を行っている病院にご紹介いたします。

2.急性前立腺炎

急性前立腺炎は前立腺全体に細菌が感染することで起こります。敗血症という致命的な状態につながる可能性があるため、迅速な治療が必要です。急性細菌性前立腺炎の明確な機序は未解明ですが、最も可能性があるのは感染した尿の前立腺への逆流と考えられています。

【症状】

38℃以上の発熱、排尿痛、排尿困難、頻尿、会陰部(陰部から肛門のあたり)の痛み、会陰部不快感などが主な症状です。時に尿閉(尿がいきんでも全く出なくなる状態)になることもあります。

【検査】

尿検査、採血、身体診察所見をもとに診断します。

【治療】

抗生物質による治療が必要になります。発熱などの症状は治療開始から数日で改善しはじめますが、完治するまでしっかり治療をしないと耐性菌ができて治療が困難になることがあります。炎症が強い場合や全身状態が悪い場合は、入院治療が必要になりますので、そのような場合は入院可能な医療機関をご紹介して治療を受けていただけるようにします。

3.過活動膀胱

膀胱が過敏になって、尿が十分にたまっていなくても自分の意思とは関係なく膀胱が収縮する状態です。急に尿意をもよおしたり、何度もトイレに行きたくなったり、ということが起きやすくなります。

【症状】

※以下の4つの症状がみられる場合は過活動膀胱の可能性があります。

  • 朝起きてから夜寝るまでの間に何回もトイレに行く(昼間頻尿 目安8回以上)
  • 眠っている間に何回も尿意で目がさめてトイレに行く(夜間頻尿 目安2回以上)
  • 急に起こる我慢できない尿意がある(尿意切迫感)
  • 急な尿意が起こりトイレに間に合わず漏らしてしまう(切迫性尿失禁)

【検査】

質問票(過活動膀胱症状スコア)で症状をスコア化して症状の程度を把握し、検尿、超音波検査で腎臓や膀胱に何か異常がないか、膀胱に残尿がないかの評価を行います。

【治療】

① 行動療法
A)膀胱訓練

尿をなるべく我慢してもらい、1回に膀胱がためることができる尿の量を少しずつ増やします。膀胱訓練だけでは治療が困難なことが多く、薬物療法と併用して行います。

B)骨盤底筋体操

腹圧性尿失禁に有効な治療ですが、過活動膀胱にも有効な治療です。体操の仕方の指導を行い、パンフレットを差し上げます。

② 薬物療法

抗コリン剤(膀胱が勝手に収縮するのを抑える薬剤)や、β3受容体作動薬(膀胱をゆるめて尿をためる機能を高める薬剤)で治療を行います。

4.神経因性膀胱

神経因性膀胱は、脳・脊髄の中枢神経、あるいは脊髄から膀胱に至るまでの末梢神経の様々な病気によって、膀胱や尿道の働きが障害され排尿障害をきたす病気の総称です。

【症状】

頻尿の場合は、脊髄(腰髄・胸髄・頸髄)疾患や脳疾患(脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、小脳変性症など)が原因の可能性があります。

【検査】

身体診察で神経の病気に関わるような神経症状がないかどうかを診察します。検尿、超音波検査で腎臓や膀胱に何か異常がないか、膀胱に残尿がないかの評価を行います。

【治療】

膀胱の収縮を抑制する薬(抗コリン剤など)の処方や、過活動膀胱の項で述べた膀胱訓練、骨盤底筋体操などを併用して治療します。

5.尿路結石症(尿管結石、膀胱結石)

尿路結石は、男性の7人に1人、女性の15人に1人が生涯に経験するといわれています。食生活の欧米化などが原因で、年々尿路結石にかかる人の数は増加傾向です。

【症状】

尿管結石が尿管と膀胱の接続部(尿管膀胱移行部)に到達すると結石が膀胱壁を直接刺激するために頻尿、排尿時痛などの膀胱炎のような症状が出現します。膀胱結石の場合も、膀胱粘膜を結石が刺激して頻尿となる場合があります。

【検査】

頻尿以外に肉眼的血尿や腰背部痛(通常は片側)といった症状がないかも確認し、肋骨脊柱角叩打痛などの身体所見確認、検尿や血液検査および腹部超音波検査、CTなどの画像検査を行い、総合的に診断をおこないます。

【治療】

尿管結石が尿の通過障害の原因になれば、腎臓の内部(腎盂)に尿がたまった状態(水腎症)となり、疼痛や腎機能障害の原因となるため治療が必要となります。水腎症になると細菌が繁殖しやすくなり、腎盂腎炎や敗血症をおこすことがあります。結石に水腎症、発熱を伴う場合は、早急な処置(ドレナージ)を要しますので、すぐに対応可能な病院へとご紹介させていただきます。

感染を伴わない10ミリ以下の結石に対しては、結石による痛みを鎮痛剤でコントロールしつつ、水分摂取の励行や排石を促進する薬によって自然排石を期待する保存的治療を行います。症状発現後1か月以内に自然排石を認めない場合は、積極的な治療(手術)も検討します。

10ミリ以上の結石に対しては自然排石の可能性が低いため手術を検討します。手術が必要な場合は、結石破砕術が可能な病院にご紹介させていただきます。

(手術)
経尿道的結石破砕術(TUL)

外尿道口から結石の直下まで内視鏡を挿入し、体内式衝撃波結石破砕装置(リトクラスト)やレーザーを用いて結石を破砕します。

6.膀胱がん

【症状】

膀胱がんの患者さんで最も多い症状は無症候性肉眼的血尿(痛みを伴わない血尿)ですが、まれに膀胱炎の症状(排尿時痛、残尿感、頻尿など)を契機に膀胱がんが見つかる患者さんもおられます。膀胱炎の症状を繰り返し、なおかつ治りにくい場合は、膀胱がんが隠れていないかも考えて精査する必要があります。

【検査】

検尿や尿細胞診検査、超音波検査などの負担の少ない(痛みの少ない)検査を主体に行いますが、膀胱がんを診断するにはこれらの検査に加えて、膀胱鏡検査を行う必要があります。腫瘍の大きさによっては、CT検査やMRI検査を追加することがあります。

【治療】

① 経尿道的膀胱腫瘍切除術

膀胱がんが見つかれば、まず行う手術です。全身麻酔もしくは腰椎麻酔で、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて腫瘍を切除します。切除した腫瘍を回収し、病理検査に出して顕微鏡で詳しく検査し、膀胱がんの悪性度、深達度を診断します。約1週間程度の入院が必要になります。

表在性膀胱がんであれば、この内視鏡手術で根治が期待できます。腫瘍の数が多い場合や、膀胱の粘膜の中に広範囲にがんが散らばった状態である上皮内がん(CIS)の場合には、治療や再発予防目的に抗がん剤やBCGなどの薬剤を膀胱内に注入する「膀胱内注入療法」まで行う場合があります。これらの治療には副作用や合併症がありますが、膀胱はそのまま残るため、生活の質の低下は軽度に留まります。

一方、画像検査で転移はないものの、がん細胞が膀胱の筋肉にまで及んでいる「筋層浸潤性がん」の場合には、膀胱をすべて摘出する膀胱全摘除術が第一の選択肢となります。

② 膀胱全摘術

最近は腹腔鏡やロボット(ダヴィンチ)で手術をすることが多くなってきました。膀胱を全摘した場合、尿の通り道を再建しなければなりません。これを尿路変向といいます。尿路変向には大きく分けて2つあり、ストーマという袋を体に装着して袋に尿を出す方法と、小腸を使用して新たに膀胱を作り、それを尿道とつなげて尿道から排尿できるようにする方法の2種類があります。どちらの術式を選択するかは、がんの状態や、患者さんの希望などを総合的に判断して決定します。

③ 転移のある浸潤性膀胱がんの治療

転移がある場合、手術は困難です。第一選択は抗がん剤治療になります。

※これら①~③の治療に関しては入院加療が必要となりますので、施行可能な病院にご紹介させていただきます。

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