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膀胱の病気

  1. 膀胱がん
  2. 膀胱結石
  3. 急性膀胱炎
  4. 過活動膀胱
  5. 神経因性膀胱
  6. 間質性膀胱炎

1.膀胱がん

膀胱がんの患者さんで最も多い症状は無症候性肉眼的血尿(痛みを伴わない血尿)ですが、まれに膀胱炎の症状(排尿時痛、残尿感、頻尿など)を契機に膀胱がんが見つかる患者さんもおられます。膀胱炎の症状を繰り返し、なおかつ治りにくい場合は、膀胱がんが隠れていないかも考えて精査する必要があります。

【検査】

検尿や尿細胞診検査、超音波検査などの負担の少ない(痛みの少ない)検査を主体に行いますが、膀胱がんを診断するにはこれらの検査に加えて、膀胱鏡検査を行う必要があります。腫瘍の大きさによっては、CT検査やMRI検査を追加することがあります。

【治療】

①経尿道的膀胱腫瘍切除術

膀胱がんが見つかれば、まず行う手術です。全身麻酔もしくは腰椎麻酔で、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて腫瘍を切除します。切除した腫瘍を回収し、病理検査に出して顕微鏡で詳しく検査し、膀胱がんの悪性度、深達度を診断します。約1週間程度の入院が必要になります。

表在性膀胱がんであれば、この内視鏡手術で根治が期待できます。腫瘍の数が多い場合や、膀胱の粘膜の中に広範囲にがんが散らばった状態である上皮内がん(CIS)の場合には、治療や再発予防目的に抗がん剤やBCGなどの薬剤を膀胱内に注入する「膀胱内注入療法」まで行う場合があります。これらの治療には副作用や合併症がありますが、膀胱はそのまま残るため、生活の質の低下は軽度に留まります。

一方、画像検査で転移はないものの、がん細胞が膀胱の筋肉にまで及んでいる「筋層浸潤性がん」の場合には、膀胱をすべて摘出する膀胱全摘除術が第一の選択肢となります。

②膀胱全摘術

最近は腹腔鏡やロボット(ダヴィンチ)で手術をすることが多くなってきました。膀胱を全摘した場合、尿の通り道を再建しなければなりません。これを尿路変向といいます。尿路変向には大きく分けて2つあり、ストーマという袋を体に装着して袋に尿を出す方法と、小腸を使用して新たに膀胱を作り、それを尿道とつなげて尿道から排尿できるようにする方法の2種類があります。どちらの術式を選択するかは、がんの状態や、患者さんの希望などを総合的に判断して決定します。

③転移のある浸潤性膀胱がんの治療

転移がある場合、手術は困難です。第一選択は抗がん剤治療になります。

※これら①~③の治療に関しては入院加療が必要となりますので、施行可能な病院にご紹介させていただきます。

2.膀胱結石

尿路結石は、尿路(腎臓~尿管~膀胱~尿道)に結石が存在する病気のことをいいます。男性の7人に1人、女性の15人に1人が生涯に経験するといわれています。食生活の欧米化などが原因で、年々尿路結石にかかる人の数は増加傾向です。尿中の物質がなんらかの原因によって腎で結晶化し、それが核となり凝集、成長を繰り返して結石となります。上部尿路結石(腎結石、尿管結石)が全体の約96%を占め、食生活の欧米化等によりここ10年で急増しています。

結石の成分としては蓚酸カルシウム、リン酸カルシウムが多いですが、ほかにリン酸マグネシウムアンモニウム結石、尿酸結石、シスチン結石などがあります。

ここでは膀胱結石についてご説明します。

膀胱結石は尿路のうち膀胱に石がたまってしまう病気で、尿の流れが中断され排尿が困難になったり、特定の姿勢でしかおしっこができないようになったりします。膀胱結石は腎結石が膀胱まで落ちてきたものと、排尿障害や膀胱に長期間カテーテルを入れていたことが原因で膀胱内で発生して出来るものの2種類があります。結石が原因で血尿が出たり、尿が濁ったりすることがあります(慢性膿尿)。

【検査】

身体所見確認、検尿や血液検査および腹部超音波検査、CTなどの画像検査を行い、総合的に診断をおこないます。

【治療】

手術を行い、結石を除去します。

(手術)
経尿道的膀胱砕石術

外尿道口から膀胱内に内視鏡を挿入し、体内式衝撃波結石破砕装置(リトクラスト)やレーザーを用いて結石を破砕します。

3.急性膀胱炎

急性膀胱炎は女性がおしっこをする時に痛みを感じる最も一般的な病気です。頻尿(おしっこが近い)、残尿感(すっきりしない)、排尿時痛(おしっこを出す時の痛み)などが特徴的な症状で、多くは排尿の終わりごろに尿道に不快な痛みを感じます(排尿終末時痛)。血尿が出ることもあります。細菌(大腸菌など)が尿道から膀胱へ感染することで起こります。

【検査】

検尿で尿中の白血球や赤血球、細菌の有無を確認します。どんな菌が感染しているか、また抗生物質への耐性がないかなどを調べるために、尿培養検査も必要です。
膀胱炎を繰り返す患者さんの中には膀胱機能の異常など何らかの疾患がある可能性がありますので、泌尿器科での精査をお勧めします。

【治療】

抗生物質を処方します。症状が改善してもしっかり治癒していないと再発する原因となりますので、治癒確認のため、後日(1週間後)受診していただくことをお勧めします。

高熱や倦怠感、背部痛などを伴う場合には腎盂腎炎を併発している可能性もあり、重症化するリスクもありますので、排尿時痛があれば受診することをお勧めします。

4.過活動膀胱

膀胱が過敏になって、尿が十分にたまっていなくても自分の意思とは関係なく膀胱が収縮する状態です。その結果、急に尿意をもよおしたり、何度もトイレに行きたくなったりということが起きやすくなります。

※以下の4つの症状がみられる場合は過活動膀胱の可能性があります。

  • 朝起きてから夜寝るまでの間に何回もトイレに行く(昼間頻尿 目安8回以上)
  • 眠っている間に何回も尿意で目がさめてトイレに行く(夜間頻尿 目安2回以上)
  • 急に起こる我慢できない尿意がある(尿意切迫感)
  • 急な尿意が起こりトイレに間に合わず漏らしてしまう(切迫性尿失禁)

【検査】

質問票(過活動膀胱症状スコア)で症状をスコア化して症状の程度を把握し、検尿、超音波検査で腎臓や膀胱に何か異常がないか、膀胱に残尿がないかの評価を行います。

【治療】

①行動療法
A)膀胱訓練

尿をなるべく我慢してもらい、1回に膀胱がためることができる尿の量を少しずつ増やします。しかし、膀胱訓練だけでは治療が困難なことが多く、薬物療法と併用して行います。

B)骨盤底筋体操

腹圧性尿失禁に有効な治療ですが、過活動膀胱にも有効な治療です。体操の仕方の指導を行い、パンフレットを差し上げます。

②薬物療法

抗コリン剤(膀胱が勝手に収縮するのを抑える薬剤)や、β3受容体作動薬(膀胱をゆるめて尿をためる機能を高める薬剤)で治療を行います。

5.神経因性膀胱

神経因性膀胱は、脳・脊髄の中枢神経、あるいは脊髄から膀胱に至るまでの末梢神経の様々な病気によって、膀胱や尿道の働きが障害され排尿障害をきたす病気の総称です。

【症状】

神経因性膀胱の症状は、原因となる神経疾患の部位によって異なります。

一般的には、仙髄にある第2の排尿中枢より上位の神経(腰髄・胸髄・頸髄)や脳の病気(脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、小脳変性症など)の場合には、排尿反射の抑制が効かなくなり、膀胱が勝手に収縮してしまう状態になります。そのため、頻尿(おしっこが近い)、尿意切迫感(急にがまんができないような尿意が起こる)、尿失禁(トイレまで間に合わず尿が漏れる)などの症状が出現します。

逆に、仙髄にある第2の排尿中枢より下位の神経、すなわち仙髄より末梢の神経の病気の場合(二分脊椎症、脊髄係留症候群、椎間板ヘルニア、脊椎管狭窄症、直腸癌・子宮癌手術による膀胱への末梢神経障害など)には、膀胱の収縮が障害されて、排出障害(おしっこがうまく出せない状態)が出現します。

【検査】

身体診察で神経の病気に関わるような神経症状がないかどうかを診察します。検尿、超音波検査で腎臓や膀胱に何か異常がないか、膀胱に残尿がないかの評価を行います。

【治療】

蓄尿障害(おしっこをためることの障害)の場合は、膀胱の収縮を抑制する薬剤(抗コリン剤)や、過活動膀胱の項で述べた膀胱訓練、骨盤底筋体操を併用して治療します。

一方、排出障害(おしっこを出すことの障害)の場合には、膀胱の収縮を強める薬剤を使うことがありますが有効性は低く、清潔間歇導尿が標準治療となります。清潔間歇導尿とは、自分あるいは家族の方が、必要時に尿道からカテーテル(管)を挿入して膀胱内の尿を出し、尿を出したらカテーテルを抜くという排尿管理方法です。

6.間質性膀胱炎

膀胱に原因不明の慢性的な炎症がおこり、進行すると膀胱が萎縮する病気です。主な症状は、膀胱痛,頻尿,尿意切迫感などです。男性に比べて女性(特に中年以降の女性)に多く、細菌感染で起こる急性膀胱炎や尿意切迫感を来す過活動膀胱と症状は似ていますが、全く別の病気です。典型的な症状としては、尿がたまってくると膀胱に痛みを感じます。ほんの少し尿がたまっただけで痛みを感じ、1日に20回も30回もトイレに行って排尿しているような場合には、この病気の可能性を考える必要があります。

【検査】

診断には膀胱内視鏡検査で間質性膀胱炎に特有の膀胱粘膜所見を確認することが必要になります。

【治療】

①膀胱水圧拡張術

腰椎麻酔または全身麻酔下に生理食塩水を自然落下させながら膀胱を拡張させる治療です。ハンナ病変という間質性膀胱炎に特徴的な病変がある場合は切除および焼灼を行います。反復的な治療を要することが多いですが,症状緩和には有効です。入院による治療が必要ですので、施行可能な病院にご紹介させていただきます。

②ジメチルスルホキシド(DMSO)膀胱内注入療法

DMSOは炎症抑制、筋弛緩、鎮痛などの作用があると言われ、古くから間質性膀胱炎の治療に使用されてきました。2021年4月から保険適応となり、保険診療が可能となりました。
治療の実際は、まずDMSO注入時の疼痛を緩和する目的で尿道から細いカテーテルを入れ膀胱内に麻酔薬を注入し15分程度待ちます。その後、麻酔薬を除去し、再度尿道から細いカテーテルを入れ膀胱内にDMSOを注入します。15分おしっこを我慢してもらいトイレで排尿してもらいます。この治療を2週間に1回、合計6回行います。

③薬物療法

残念ながら内服特効薬はないですが、古くから抗うつ剤、抗アレルギー剤などが用いられています。症状緩和に役立つ場合があります。

④食事指導、生活指導

香辛料(わさび、唐辛子、こしょうなど)や酸っぱいもの(柑橘類、トマト、梅干しなど)、アルコール、カフェインなどは間質性膀胱炎の症状を増悪させるとされていますので、控えめにしてもらうよう指導します。また、下半身を冷やさないこと、ストレスをためないことも大切です。

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